森薫の異常な愛情

エマ 9巻 (BEAM COMIX)

エマ 9巻 (BEAM COMIX)

作者の森薫は幸せな人生を送っているなぁ、と感じずにはいられない一冊です。

とにかく19世紀のイギリスが描きたくて描きたくてしょうがなくて、そのためにはストーリーとか体裁とかもうどうでもいいと思っているのでしょう、読み終わってみると一体どこが「エマ」なのかさっぱり分からない。そもそもこの作者さんはあまりストーリーものが得意ではないのでしょう、どのお話もストーリーは単純で陳腐なものばかり。

それでも読んでいて楽しく感じるのは、森薫の異常なほどの「だって描きたかったんだもーん!」が清々しく感じてしまうからでしょう。ここまで自分に正直に生きられるって、素晴らしい。

私も学会で突っ込みを入れられたら、森薫のように涙を流しながら「だって作りたかったんだもーん!」「だって実装したかったんだもーん!」と叫んでみるといいかもしれぬ。