千夜一夜物語

バートン版 千夜一夜物語 第1巻 シャーラザットの初夜 (ちくま文庫)

后の不倫に悩まされたシャーリヤル王は、夜ごとに1人の処女と交わり翌朝殺すようになる。大臣の娘であるシャーラザッドは王の行いを止めるべく王のもとへ上り、世にも不思議な物語を紡ぎ出す。

イスラム世界の物語って全く知らないなぁ」と考えて購入した本。一月ほど放置していたのですが、今日何気なく手に取ったら面白い、面白い。

シャーラザッドが物語り、夜更けを迎えると…。

−−シャーラザッドは夜がしらんできたのを知って、許された物語をやめた。「明晩、お聞かせできるはずの話にくらべると、今晩の話しなど問題ではありませんわ。ただ王さまさえわたしの命をお助け下さいますならね」

シャーリヤル王は思った。「アラーに誓って、後の話を聞いてしまうまでこの女を殺すまい。じつに不思議な話だから」

こうしてシャーラザッドはお話を紡いでいくんだけれど、夜が明けるたびに「続きは?続きは?」とシャーリヤル王と同じように続きをせがむようになってしまいます。シャーラザッドが物語り始める前のシャーリヤル王のお話からして既に官能的で悲しくておかしいお話です。



ところで千夜一夜物語では魔神がよく登場するのですが、イスラム教では神様はアラーだけじゃなかったっけ…魔「神」がなぜ登場するの?と勘違いしてしまいました。魔神は悪魔の類として扱われているのですね。「神」の指す概念が西洋と日本では違いすぎるから混乱する。

だけど彼らを「悪魔」と訳すとどこかキリスト教的。「魔神」という言葉を使うとイスラム的なニュアンスを帯びる。その微妙な違いがまた見ていて楽しいのです。

こういう伝統的な話って、それを書いた民族の考え方を凄く反映するものです。以前ルパン生誕100周年に公開された映画「ルパン」を見たときなんか、もう、何て言うか、あぁ、これがキザなフランス人ってやつなんだな、とため息が出ました(笑)。

千夜一夜物語も読んでいると、今まで知らなかった「イスラム世界」の考え方や生活が色々と浮かび上がってきます。それがたまらなく面白いのです。