救急車が作る場の空気

私、救急車が好きです。救急車が通るときの、その場の雰囲気が大好きなのです。


今日も交差点を歩いていたら、救急車のサイレンが遠くから聞こえてきました。

途端に、その場にいる人と車にちょっとだけ緊張感が走ります。お喋りしていたおばさん達は足早に横断歩道を小走りに横切り、車は一斉に止まる。道路脇に移動して道をあける車もいる。

…そして、その場にいる全員が作った道を、救急車が遠慮がちに走っていく。そして、サイレンが軽いドップラー効果をおこして走り去る。

救急車が走り去った瞬間、まるで魔法がとけたようにおばちゃんはお喋りを再開する。車はびゅんびゅん走り出す。元の風景に戻る。



何でもない日常の光景だけれど、いつもこれを見る度に私はちょっとした感動をするのです。誰にも習ってないし練習もしていないのに、救急車の通り道があそこまで華麗に作られ、そして煙がふわりと消えるように元の風景に戻る。感動に値すると思うのです。美しいものを見た、といつも思うのです。