マルチタスクとファミレスと研究室

今日も今日とて論文を書いているのです.

ところで以前ある人から「色んな仕事を同時並行でやれるべきです.例えばAとBという仕事があったとき,まずAをやり,それに途中で飽きたら今度はBをやり,また飽きたらAに戻る…こうすると仕事が捗りますよ」と言われたことがあります.

以前から疑問に思っていたのですが,今ならはっきり言える.それ,無理.出来る人がいるのかも知れないけど,俺には無理!



落ち着いてマルチタスクの原理を思い出してみればいいのです.Aの仕事を中断して別の仕事に切り替える場合,Aの仕事に関連する情報をいったんレジスタからメモリや2次記憶装置にコピーする必要があります.そしてまた後にAの仕事を再開する場合は,逆をやる必要がある.

これが如何にコストがかかることか.だから私は自然とこのタスク切り替えを避けるようになっています.

例えば今日は研究室で論文を書いている間,ずっと iPod で音楽を聴いていました.iPod を胸ポケットに入れているので,机に向かっているときも飲み物を補給するときもトイレに行くときもずっと音楽を聴きっぱなしです.

これは iPod を聞いて外界の刺激を遮断することで,脳内レジスタに蓄えた情報を消さないためなのです.だから冷蔵庫に向かって歩いているとき,私がどこか踊っているようなステップだったとしても責めないで欲しい.私はプログラムや論文を書いていてノっている時は体が踊るのです.飲みものを補給しつつ,そのノっている脳の状態を維持したいだけなのです.アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」の劇中歌“Lost my music”に合わせてノっているだけなのです.



一時期,研究室ではなくファミレスで仕事をやっていたのも,同じ理由です.脳内レジスタの情報は,人に話しかけられたときに消滅します.研究室でお仕事をしているときに「あのぉ,何かサーバがおかしいんですけど…」と話しかけられた途端,“ことだま on Squeak”における日本語語順にまつわるエトセトラ(書いている論文の内容です)が瞬間的に消滅し,研究室のネットワーク構成図とサーバの提供サービス一覧がロードされてしまいます.

後輩と一緒にサーバのお守りをやって問題解決してから,さて論文に取りかかろうとすると,“ことだま on Squeak”における日本語語順にまつわるエトセトラを再度レジスタに入れようとしても,なかなか時間がかかる.研究室で集中できないことが多いのはそのせいです.



じゃあ常にファミレスで仕事をすればいいじゃんと言われそうですが,人間というのは厄介なもので.

私が一塊の仕事処理機械であるならば,研究室ではなくファミレスに設置してあげれば能率的に仕事をするでしょう.1週間や2週間なら仕事をするでしょう.でもおそらく3週間目から精神がおかしくなってくるでしょう.

修士1年の夏休みに,私は大学院棟にこもって1ヶ月間ゲーム作りをやったことがあります.この時期の私は一塊のプログラム製造機械で,土日も休まず,寝るとき以外はただひたすらゲームを作ってました.楽しくて楽しくてたまらなかったのです(うーん,今思い出すと若かったんだなぁ).

3週間目に,心と体に変調をきたしました.心はゲーム作りを進めたくてたまらないのに,体が言うことを聞かない.別に体調がおかしいわけではなく健康そのものなのに,何故か心と体がプログラムを書いてくれない.それどころか見慣れた大学院棟の景色が,どこか不自然に感じたりしました.あんな状態になったのは後にも先にもあの時だけです.



だから私は研究室に行って,適度に邪魔されながらお仕事をするのです.皆さん,適度に俺の仕事を妨害してください.

…適度にな.