Ys-OriginとYsシリーズと英雄伝説シリーズ、そして腹痛

昨日は研究室に泊まり込んで後輩達の論文作業をヘルプしていたせいか、変なセキが出るし、お腹が痛い。

よし、こう言うときはゲームの話しでも語って腹痛を吹き飛ばすぞ!



先日、Ys-Origin をクリアしました。20年前から続く Ys シリーズの最新作なのですが、メーカーである日本ファルコムの苦悩が感じられる作品でした。Ysシリーズのコンセプトを見失いつつあるのかもしれません。

日本ファルコムは老舗のゲームメーカーで、私が小学生の頃から主にPCゲームを作っています。その中で注目を集め続けているのが「Ysシリーズ」と「英雄伝説シリーズ」です。どちらも20年間続いているシリーズであり、歴史だけならドラクエやFFに匹敵しているのです。


英雄伝説はオーソドックスなRPGであり、そのコンセプトについてスタッフが雑誌で「英雄伝説は“Legend of Heroes”と英雄を複数形で表しているが、これは主人公が4人パーティだからではなく、この物語に登場する全ての人が英雄であると考えているからだ」と語っていました。武器を売ってくれる武器屋、一晩の宿を貸してくれる宿屋、海を渡してくれる船頭、これらがみんな英雄であるというのです。

そしてそんな英雄達が活躍する物語をしっかりと描きたい、と考えたのでしょう。

それを反映して、英雄伝説シリーズの主人公はみんな幼くて頼りないキャラが多く、それを周りの人が支えるというストーリーが多い気がします。「英雄伝説Ⅲ 白き魔女」は、「孤高で孤独な英雄」を一度も登場しない魔女ゲルドが引き受け、主人公のジュリオとクリスは「優しく暖かな手を皆に差し伸べられる英雄」として描かれます。伝説の英雄という存在ではなく、「英雄とは常に人々と共にあるべきだと思う」という考えの元に描かれているわけです。

最新作の「英雄伝説Ⅵ 〜空の軌跡〜」、孤高の英雄を歩もうとするヨシュアと、人と共にあろうとするエステルの物語なのでしょう。それはSCにおける両者の再会シーンや、物語ラストでヨシュアと剣帝が闘っている時に放った言葉に込められています。

空の軌跡」を遊んでいて、20年間もの長きにわたって英雄伝説英雄伝説であり続けてくれたが嬉しくてたまりませんでした。正直このシリーズは解くのに40時間以上かかるので日々の生活でプレーするのが難しくなっているのですが…新しい作品が出たら意地でも時間を作って遊び倒してしまうのでしょう。頼むから新作を出さないで欲しい。新作恐い。






さて。日本ファルコムが誇るYsシリーズはどんなコンセプトを持っていたのか。

YSのコンセプトは、万人に受け入れられて感動できるゲームを作ることだったと思います。YSが登場した1987年当時、パソコンゲーム市場を埋め尽くしていたのは難易度の高いゲームでした。ゲーマーの技術はどんどんあがり、メーカーはそのゲーマーを満足させるために、どんどん難しいゲームを量産している状況でした。そのため私のような一般人にはとても付いていけないゲームがたくさんありました。そこへ一石を投じたのが YS でした。

Ysのキャッチコピーは「優しさから感動へ」。誰でも解ける難易度であり、誰もが感動できるシーンを楽しむことが出来る。当時はそれが新鮮に映りました。ちなみに現在 wii が発売されていますが、これも同じような問題意識から発したのでしょう。歴史は繰り返すのでしょうね。


Ysは物語の描き方が、英雄伝説とは違うアプローチを取っていました。英雄伝説はキャラクターにたくさんの言葉をしゃべらせることでストーリーを作っていきました。YSは逆に台詞を抑え、特に主人公は台詞を持たず、その代わりドラマチックな情景を作ることに力を注ぎました。

Ysは失われた古代王国の謎を描いた物語です。その昔イースという国がありましたが、突然現れた魔物の軍勢に存亡の危機を迎えます。そこでイースの六人の神官と二人の女神は、その魔力を結集してイースの国を空中に浮かび上がらせます。大地をえぐり、イースという国は巨大な浮島として空に消えたのです。ラピュタみたいですね。イースが空に消えた跡には、巨大な巨大なクレーターと、イースを追って魔物が建造したダームの塔が残されたのでありました。

イースが空に消えた数百年後、主人公でありアドルはその巨大なクレーターを見つけ、ダームの塔へ入り、イースの書を集め、そこから不思議な力に吸い寄せられる形で天空に浮かぶイースへたどり着きます。そして魔物との格闘の末に魔力が弱まり、イースが天空から地上へと降りていく…という物語です。

Ysは人が話を物語るのではなく、悪しきダームの塔、天空に浮かぶイースの国、生け贄を捧げる鐘点き堂などなど、情景と音楽によって話しを物語っていたわけです。そこにはアドルが何か言葉を発する必要はないわけです。



さて冒頭で私は Ys-Origin は Ys シリーズのコンセプトを見失っている、と書きました。Ys-Origin はどちらかというと英雄伝説のコンセプトで描かれてしまっているのです。

Ys-Origin の主人公はユニカ=トバ、ユーゴ=ファクト、そして謎の男の3人です。これがまたペラペラと台詞を喋る喋る。今まで神秘的な雰囲気を纏っていた女神もしゃべるしゃべる。

さらにどの主人公も弱々しく、みんなで力を合わせて最後の敵を倒すという筋書きになっています。Ysは基本的にはただ1人の主人公(アドル)が、多少の助けは貰いながらも、ただ1人で巨大な魔物に立ち向かっていく物語です。英雄伝説とは真逆なのです。


Ys-Origin はアクションRPGとしては非常に面白かったし、ストーリーもそんなに不満があるわけではありません。だけど…これは「Ysシリーズ」では無いと思うのだがどうだろう。「Ysシリーズというものに拘らなくてもいいじゃん」と言われれば、それもそうでしょう。

ですが、コンセプトという大黒柱を失った Ys という物語がどこへ漂うのか、それはファルコムが産み出すゲームをずっと好きだった私からは、いささか不安ですね。



とはいえ、Ysシリーズも英雄伝説シリーズも、20年間もの長い間続いてきたシリーズであり、それに対してあれこれと文句を言ったり空想を膨らませることが出来るというのは、幸せ以外の何者でもありません。少々不安ではありますが、Ysシリーズがこれからも長く生き残って欲しいなぁと思うわけです。








…という文章をだな、お腹が痛くて便器に座り続けながらノートパソコンを置いて書いているわけですよ。うぅ、お腹が痛いよぉ。もう1時間もトイレにいるよぉ。お腹が痛いから自分で何を書いているのかも良く分からないよぉ。