時間が生まれる瞬間

ちょっと時間がかかりましたが、読了。

時間はどこで生まれるのか (集英社新書)

時間はどこで生まれるのか (集英社新書)

この世界には人間が感じているところの時間というものは実在しない。例えば自分が感じることが出来る主観的な時間(A系列)や、西暦?年に何々という事件が起きたという時間(B系列)は、物理学的に突き詰めていくと実在しなくなってしまう。

だけど、ただ配列として存在し順序関係に意味が無い時間(C系列)だけは存在する可能性がある。


じゃあ我々が日々感じている時間というものは一体何なのか。量子力学を考察していくと、C系列の時間以外は認められないというのも分かるけれど、では我々が日々感じる時間とは一体何なのか。


この問いに対して、この本ではエントロピー増大の法則と、それに立ち向かう生命の意志を持って答えようとしている。生命は意志によって生まれ、そしてそこに「時間が生まれる瞬間」がある。

お、お、お、面白い!

意志というものを物理学的に定義していないのは愛嬌でしょう。物理学を正確に記述しようとする姿勢と、時間を物理的&哲学的に考察しようとする姿勢の絶妙なバランス感覚により生まれた歪みなのだから、そこは突っ込まないのが吉。



ところでこの本では、エントロピー減少の法則が働く架空の世界を考察していますが、「そこでは生命は生まれず、意志も生まれず、また時間も生まれない」という記述が一番面白かった。現実世界にも局所的にエントロピー減少の法則が限定的に成立する空間があり、それにより意志も時間も失われ、生命が失われる現象が起こっているのかも、などと取り留めもないことを考えます。何を指しているかは、まあ言わない方向で。