アフタヌーンが面白い

今月号のアフタヌーンが面白いのです。もう長いこと買い続けている漫画誌ですが、ここしばらく面白くなくて買うのをやめようかと思っていた矢先なので、喜びもひとしお。アフタヌーンらしいアフタヌーンが読めるのは幸せの極みというべきなのです。


まず今月号には新人作家が描く四季賞受賞作品をまとめた別冊紙が付いてきたのですが、4作品がどれもアタリ。

四季大賞の「海へ来る理由」は、言葉にした比喩が現実のものとなる少女のお話。こういうちょっと変な設定を、荒削りな描写力で描かれた物語は大好き。

四季賞の「ゲットーの太陽」は、差別に苦しむ黒人少年が白人少女と出会って希望を見出すお話。選評の通りありきたりな設定なんだけど、絵から伝わってくる作者の熱意がダイレクトに心地よい。特に白人少女の表情が輝いて見えます。新人特有の熱意が伝わってくる。四季賞作品は、真っ直ぐな作品であって欲しいです。

同じく四季賞の「WORKING ROBOTA」は、ポンコツな中古事務ロボットと女性のお話。2人の会話がすっとぼけていてすごく可笑しい。

…と、四季賞受賞作品はどれも「ああ、これでこそ四季賞だよ!」と感激するようなものが揃っていました。



さらに今月号は連載漫画も面白かった。

一番は、とよ田みのるの「FLIP-FLAP」。先月号から連載が始まったのですが、テーマがピンボールブコメ。いまどきのピンボールが置いてあるゲームセンターなんてどこにもねーよ…と思いながらも、作者が描くピンボールがすっげー面白そう。そしてハッジング(台を揺らすテクニック)の描写がすっげー熱い。「もらって下さいっっ!!!!」「頂きましたっっ!!!!」の見開き2ページに感動した。やっぱとよ田みのるの漫画は面白いよ!!

二番は、篠房六郎の「百舌谷さん逆上する」。これも先月号に連載スタートで、テーマが「本格ツンデレ物語」。ツンデレ病という奇病にかかった少女が主人公なのですが、「だったら何でお父様とお母様は私なんかを生んだりしたの?私がツンデレになるの……絶対分かっていたことなのに!!」「お嬢様!お嬢様!一体何処へ!待って下さいお嬢様!!」という台詞に笑ったのは私だけではないはずだ。それはギャグで言っているのかと思いきや、比較的マジメに恋愛物語を描こうともしているらしい。篠房六郎はとても力がある作家なので、とても期待しています。

他にも最近連載が始まった、芦奈野ひとしの「カブのイサキ」、秋山はるの「オクターヴ」などが面白い新鮮さを提供してます。どちらも真っ先に読みたくなる漫画です。



と思いきや、古参の連載漫画も面白い。

漆原友紀の「蟲師」。最近面白くなくなってきてるし、もうそろそろ連載やめて新しいのを書けばいいのになーと思っていたのですが、今月号の樹のお話は面白かった。自然に対する畏敬の念を描く時は抜群に面白くなりますね。

ひぐちアサの「おおきく振りかぶって」。これも最近面白くなくなってきたなーと思っていたけれど、今月号は面白かった。詳しくはネタバレになるので書きませんが。読んだときは「うわぁ、そう来たかー」と思いました。来月号も楽しみ。

最近ぐいぐい面白くなってきてるのが、幸村誠の「ヴィンランド・サガ」。表紙の煽り文句は「乾坤一擲−− 決着の、刻。」でしたが、その名にし負う内容でした。トルフィンとトルケルの決闘が決着ついた、ような。ネタバレに近いのでこれ以上は。

ヴィンランド・サガのスピンオフギャグ漫画である、西本英雄の「ユルヴァちゃん」も地味に面白い。こってりしたヴィンランド・サガ本編を、さわやかなアイスでお口直しするようなゆるやかな笑いに満ちていて、この漫画を起用した編集者か編集長は本当にいい仕事してると思う。今ではこの2つがセットになっていないと楽しめないような気もしてきます。

他にも、柏原麻美の「宙のまにまに」、田中ユタカの「ミミア姫」、植芝理一の「謎の彼女X」、「しおんの王」、「ラブやん」は安定した面白さを発揮してくれて頼もしい限り。上に書いたような漫画がつまらないとこれらの「安定した面白さ」もつまらなくなってしまうのですが、逆も然りなのです。「ミミア姫」はもっと頑張れ。



さらにさらに来月号からは木村紺が「からん」という新連載を開始するそうで、あの人の作品ならオールオッケーカモンカモーンな私としては嬉しい限り。





…と、長くなりましたが、アフタヌーンの漫画に対してこれだけ書きたくなるようになるというのは幸せの極みです。