鬱と、それを見る辛さ

友人と話していたら様子がおかしい。気になっていくつかの質問をしたら、それは明らかな鬱症状の前触れでした。

過去何人かそういう人を見てきました。これで5人目になります。真面目だったり、活発だったり、人に気を使うような、付き合っていて気のいい人達が見る見るうちに元気を失っていくのです。そういう人を見るのはね、本当に本当に本当に辛いのよ…。当人も辛いだろうけど、見ているこっちも本当に本当に本当に本当に辛いんです…。



少し前の話しをしましょう。当時お付き合いのある後輩の女の子がいました。色んな知識や経験の吸収にどん欲な子で、凄く明るくて、話しをしていて本当に楽しい、魅力的な子でした。私もその子に付き合って色んなものに手を出したし、今の色んな趣味のベースはその時の子と共にあります。

その子は技術の吸収にもどん欲だったから、私も色んな授業めいたこともしました。人を育てることにあんなに意欲が出たのは珍しいなぁと感じたのを覚えています。FreeBSDにはまってて「パッケージのmake installが面白いんですよー。viのひねくれ具合も!」などと言い出す変な子でしたが…。



ところが、ある時期から少しずつ様子が変になっていきました。自己嫌悪することが多くなり、ネガティブな思考が増え、「明日こそは生まれ変わります!」と無理に元気を出して、だけど何も変われずそのことをまた自己嫌悪して…。

あんなに活発だったその子が、見る見る生気を失い、声に力が出なくなり、そんな自分が許せなくてまた自己嫌悪する。それを繰り返し、どんどん生気を失っていく。

私の目の前には、正体不明の「何か」に押し潰されそうになって、泣き出しているその子がいました。本当に本当に本当に辛いのです。「何でこの子がこんな目にあわなくちゃいけないんだ!この子が何か悪いことをしたか!」という、どうしようもない理不尽な感情が渦巻いて、辛いのです。



その後、その子は驚くほど回復していきます。目の前で泣くその子に対して、30分後に控えたゼミを「サボれ!」と命令して、その後研究室を「やめろ!もう行くな!」と命令しました。他人に対して命令するような性格してないのでちょっと辛かったのですが、私もその時は必死でした。

そしてその子が抱えている荷物を1つ、強制的に下ろさせました。

そして「今から呑みに行くぞ!」と命令しました。…これは私が呑みたかっただけか(笑)。


以前からその子はバックパッカーに対する憧れがありました。そこで「海外へ行ってきなよ」と薦めました。出発前の数週間、海外の色んな国の色んな場所について語り合いました。世界地図の白地図があれば、何時間でも色んな国の魅力と旅行計画を語れました。

そしてその子は、とある国へ行って色んな体験をして、色んな人と出会いました。貴重な体験をしたのでしょう。帰ってきたら驚くほど元気になって、興奮しながら土産話をしてました。

その後の数ヶ月は、私が「大丈夫?本当に大丈夫?元気?」とやんちゃな娘を心配する親のようにオロオロし、その子が「大丈夫ですって!元気です!」と返すようになりました。強い眼を持ち、色んな新しいことにチャレンジする、人懐っこい笑顔を浮かべるその子に戻りました。

もう今ではお付き合いはありませんが、どこかで変わらず元気にやっているのでしょう。そう、祈りたいです。



この子のように上手くいくものなのか、分かりません。今回の友人の場合は、私に出来る事なんてそんなに多くない。

それでも自分の精一杯の知と情を信じて、語りかけるだけです。元気になりますように。笑顔が戻りますように。私の言葉が持つささやかな言霊の力を信じて、ただ祈るだけです…。

(なお私はカウンセラに相談した上で行動しました。上記はあくまで一例に過ぎないので、注意しましょう。軽度・重度によってすべき行動も全く変わると思います)