アニメ「二十面相の娘」に登場しているのは、怪人ではなく怪盗なのだ

まだまだ続くアニメ「二十面相の娘」。江戸川乱歩の「怪人二十面相」を下敷きに作られていて、今週の十七話ではついにアレが登場してうぉぉみたいな展開です。


とはいえ、第一話は夢中になったものの、話数を重ねるたびに「これ、何かが違うんじゃねえかな」と感じるようになっていました。出来が悪いというわけじゃないんだけど、小学生の頃に読んでいた少年探偵団と明智小五郎と二十面相の物語とは、まったく違う点がある。


その違和感の正体が、ようやく分かりました。怪人と怪盗の違いなんですよ。

アニメ「二十面相の娘」に登場する二十面相は、ルパン三世のようにキザで華々しく爽快なアクションをする一方で、アルセーヌルパン、つまり「怪盗ルパン」のような深い知識と教養と落ち着きがある。ルパンとルパン三世の良いところをつなぎ合わせ、イケメンに仕上げたのが「二十面相の娘」の二十面相なのです。

だからイメージは二十面相よりも怪盗ルパンが近い。そう思ってアニメ「二十面相の娘」の公式ページを見ると、トップページにこんな一文があります。

世紀の怪盗・二十面相がその夜盗み出したのは
一人の女の子だった

そう、彼は「怪盗」なのです。



だけど江戸川乱歩が描いた二十面相は、怪盗ではなく「怪人二十面相」なんです。怪人はもっとおどろおどろしくて、「いったいあの正体はなんだ!?」という不気味な雰囲気がある。

そもそも「怪人二十面相シリーズ」のどこかに必ず描かれていたエンブレムは、これでした。
http://www.geocities.co.jp/Bookend/6946/ranpo-se3.JPG
この不思議な仮面の笑みは、格好良さとか爽快なアクションとは無縁です。不気味で、正体不明で、恐い、だけどホラーとも違う怖さで、何とも不思議な印象を抱いたものです。こうして改めて見ると、ほんとに良くできたエンブレムだと思う。

二十面相シリーズの表紙って、こんな感じでしたよね。
http://www.geocities.co.jp/Bookend/6946/ranpo-juve1.JPG
http://img263.auctions.yahoo.co.jp/users/7/8/4/3/ginza444-img416x470-121838275486kbus93302.jpg
どれも不気味。ホラーのような「恐怖」ではなく「不気味」。それが怪人二十面相の持ち味なんですよね。誰が描いたのか知らないけど、本当にこの表紙があったからこそ、小学生の私はむさぼり読んだんだろうなあ。



もちろん、だからといって「アニメ二十面相の娘はけしからん!あんなの二十面相じゃないやい!」とか言いたいわけではなく。ひとつのモチーフは色んな解釈がされた方が楽しいし、これを入り口に江戸川乱歩を読んでみる人が出てくればいいのです。

江戸川乱歩は生粋の変態ですからね。是非とも二十面相シリーズのような軽い不気味なお話しから、「人間椅子」とか「鏡地獄」のような真性変態小説を読んで「ぞくぞくぞくぞく」という感覚を楽しむ人が増えることを願っています。変態だよね、素晴らしいよね、江戸川乱歩。「江戸川乱歩 傑作選」なんか悪趣味のオンパレードで、ラストの「芋虫」の後味の悪さと言ったら、もう。ぼちゃんって。ぼちゃんって。ぼちゃん・・・・・・・うへへ(嫌ぁな笑みを浮かべながら)。

江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)

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どうでもいいけどこの文章を書くために二十面相シリーズの画像を探してたら、ヤフオクに行き着きました。
http://img167.auctions.yahoo.co.jp/users/2/4/6/6/yosshi63522_2-img600x392-1217576262ptyz9294672.jpg
http://page5.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/e79229482



・・・ちょと欲しい・・・。

・・・35000円か・・・。